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ラズベリーパイ5徹底レビュー:性能比較と実用ガイド

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ラズパイ5は単なるマイコンボードの域を超え、簡易ノートPC相当の処理能力を備えるようになりました。価格も上昇していますが、その分、Mac Book Air(2018年)に迫る性能と拡張性を獲得しています。

今回は、ラズパイ5の実力を徹底検証。ハードウェア仕様の詳細比較から、実際の使用感、組み立て手順、オーバークロック時の性能と発熱、日本語環境での注意点まで、ラズパイ5を最大限に活用するための情報をお届けします。

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ラズパイ5の性能比較

ラズベリーパイ4と5のハードウェア・性能比較

ラズパイ4と5の比較表です。

項目ラズベリーパイ4ラズベリーパイ5改善点
プロセッサBroadcom BCM2711
1.5GHz / 1.8GHz クアッドコア Cortex-A72
Broadcom BCM2712
2.4GHz クアッドコア Cortex-A76
CPU性能約2〜3倍向上
メモリ2GB / 4GB / 8GB LPDDR44GB / 8GB LPDDR4Xメモリ帯域幅向上
GPUVideoCore VIVideoCore VII3D性能約2倍向上
ビデオデコードH.265 (4Kp60)
H.264 (1080p60)
H.265 (4Kp60)
H.264 (1080p60)
AV1 (4Kp60)
AV1デコード対応
ビデオエンコードH.264 (1080p30)H.264 (1080p60)エンコード性能向上
ディスプレイ出力2x micro HDMI
(最大4Kp60×1 または 4Kp30×2)
2x micro HDMI
(最大4Kp60×2)
2画面 4K/60Hz対応
USB2x USB 3.0
2x USB 2.0
2x USB 3.0
2x USB 2.0
変更なし
PCIeなしPCIe 2.0 x1スロット新規追加
ネットワークGigabit Ethernet
Wi-Fi 5 (802.11ac)Bluetooth 5.0
Gigabit Ethernet
Wi-Fi 6
Bluetooth 5.0
Wi-Fi 6対応
(拡張モジュール必要)
GPIO40ピン40ピン
(新たに4ピンのI2Cを追加)
I2C追加
電源コネクタUSB-CUSB-C変更なし
カメラコネクタ1x MIPI CSI2x MIPI CSIカメラポート追加
ディスプレイコネクタ1x DSI1x DSI変更なし
サイズ85mm × 56mm85mm × 56mm変更なし
電力消費3.0W (アイドル時)
6.4W (負荷時)
4.0W (アイドル時)
8.0W (負荷時)
消費電力増加
発熱高いより高い放熱対策強化推奨
オペレーティングシステムRaspberry Pi OS (32/64ビット)Raspberry Pi OS (64ビット)64ビット推奨
発売時期2019年6月2023年10月
対応電源アダプター5.1V 3A (15W)5.1v 5A (25W)供給電力アップ

注目の変更点

正規価格ではどこでも購入できないため、実質価格でいうと従来の約2倍になっています。これにより、ラズパイ3のおもちゃ感覚から簡易ノートPCのような位置づけに進化しています。

処理性能

CPU性能が2〜3倍向上しています。Mac Book Air(2018年)程度の性能に迫る部分まで上がってきているとのことです。

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グラフィック性能

RAMの帯域幅が向上したことも加え、3D処理能力が大幅に向上しています。将来的に小型のGPUが販売されれば外付けで利用でき、AI推論処理も実行可能になるでしょう。消費電力がボトルネックになりますが、低消費電力のインテルNCSスティックを使った検証も今後紹介する予定です。

PCIeスロット

ラズパイ5のPCIeスロットにM.2 SSD変換アダプタを接続することで、microSDカードの約10倍の読み書き速度を実現できるそうです。これは今後検証する予定です。

ファン用コネクタ

従来は40ピンGPIOから電源を取っていましたが、ファン専用のコネクタが追加されています。これにより見た目がすっきりするだけでなく、CPUの温度に応じて自動的にファン速度を制御できるようになりました。コネクタに刺すだけで済むため設定も簡単で、動作音も小さいです。

電源ボタン

電源ボタンが追加され、2回押すと電源がオフになります。さらに、電源オフの状態からもう一度押すと起動します。従来はUSBケーブルを抜く必要があったため、これは大変便利な改良点です。


物足りない部分

  • 通信系はハイエンド志向というのがこれまでのラズパイのトレンドでしたが、Wi-Fi 6は拡張モジュール対応となっており、USB 3.0からの進化がないのも残念です。
  • イーサネットLANコネクタはもはや不要で、代わりにサンダーボルト対応などの現代的な接続方式が欲しいところです。 

注意点

25W電源が必要なため、従来のスマホ充電器(2A)では処理負荷がかかると動作が不安定になります。今回の電力要件アップにより、ノートPC用の電源アダプタが必要になっていますので注意が必要です。

購入キットについて

こちらのものを購入しました。

市場には似たようなキットが多数あり迷いますが、今回購入したものはセール中で20,550円だったため良いコストパフォーマンスだと判断しました。主な内容物の評価を紹介します。

  • 電源アダプタ
    • 5.1Aに対応しており、ラズパイ5の性能を最大限に引き出せます。
  • microSD Sandisk Ultra 64GB
    • 今まで念のためと思い、より高価なExtremeモデルを使っていましたが、Ultraでも性能差はほとんどありませんでした。このベンチマーク結果ではほぼ変わらずでした。
  • アクティブクーラー 
    • オーバークロックで2.4GHzから2.8GHzまで引き上げても85度の温度制限に達せず、冷却性能は十分です
  • ケース
    • 何かに干渉するということもなく、プラスチックなので軽量な点はグッド。
    • ケースをした状態でピン端子をアクセスできる点はとても良いと思います。
    • 電源ボタンも外から押せるように配慮されてます。
  • 残念だった点
    • LANケーブルは現在ではあまり必要性が低く、コスト削減できる部分だと思われます。
    • アクティブクーラー用のクッション材は切り方が粗く、安価な印象を受けました。
    • ケースは機能的には問題ありませんが、近くで見ると細かい擦り傷があり、やや安物感があります。

組み立て

組み立てについて不明点がある場合は、別途作成した動画を参考にしてください。

TIPSとしてケースがとても硬いので外すときは、以下のすきまに指の先の肉を挟む感じで引っ張ると外すことができます。

ラズパイのインストール

まずはmicroSDカードにOSを書き込むところから始めます。

専用ツール「Pi Imager」を使用すると簡単にインストールできます。以前はOSをダウンロードしてから手動でフラッシュライタを使って書き込む必要がありましたが、現在はボタン操作だけで完了します。

現在の最新OSはBookwormですが、VNC接続で日本語のコピー&ペーストに問題があります。この問題が重要な場合は、一つ前のバージョンであるBullseyeを使用することも検討してください。詳細はこちらの記事に書いてます。

インストール方法などは下記サイトがわかりやすいと思いますので参考にしてください。

Raspberry Pi Imagerの使い方 ― v1.7.2以降 対応版 - SORACOM公式ブログ
こんにちは、ソラコムの伊藤(ニックネーム: Masaki)です。 Raspberry Pi(ラズベリーパイ、通称:ラズパイ)は、センサーと接続できる小型のコンピューターで、IoTの検証やデモなどのよく使われます。そして「

PI Imagerの設定


Wi-Fiの国設定(JP)は選択しなくても動作しますが、電波法規制に適合するために設定しておくことをお勧めします。

設定画面には国を選択する箇所が2か所ありますが、マウスのスクロールでは進みづらいため、カーソルキーを押し続けると素早く選択できます。

この設定は保存して再利用できるため、OSを再インストールする際に便利です。

「サービス」タブでSSHを有効にしておくと後のリモート接続が容易になります。

以下が選択時の例になります。

起動と初期設定

初回起動

書き込みが終了したら、microSDをラズパイに挿入し電源を入れるだけです。しばらくするとデスクトップ画面が表示され、ラズパイライフの始まりです。以下の画面が表示されれば正常に起動しています。

スクリーン設定

後でVNC接続を使用する場合は、解像度の設定が重要です。適切に設定しないと画面が小さく表示されてしまいます。システム設定から解像度を変更できます。

一般的なディスプレイであれば、1280×720の設定が最適です。この解像度なら拡大表示しても全体が見やすくなります。

MACアドレスとIPアドレスの確認

VNCやSSH接続するには、初回だけはディスプレイとキーボードを接続して起動する必要があります。

起動後、ターミナルで以下のコマンドを実行し、Wi-FiのIPアドレスとMACアドレスを確認します。

ip a

「wlan0」がWi-Fiインターフェースを示します(eth0はLANケーブル接続用なので注意)。表示される情報から、MACアドレスとIPアドレスをメモしておきましょう。

DHCP固定割り当ての活用

実用的なTIPSとして、ルーターの設定でMACアドレスに固定IPを割り当てることをお勧めします。これにより、OS再インストールやSDカード交換後もIPアドレスが変わらないため接続が容易になります。ルーターによって設定や言葉は変わりますが、以下は設定例です。

ラズパイ側でIP固定設定することも可能ですが、以下の理由からルーター側のDHCP固定割当が便利です:

  • ルーターは一つだがデバイスは複数あり、IPの割り当て状況が把握しづらい
  • ルーターのIP自動払い出しでは重複が起こる可能性がある
  • ルーター側で設定すれば確実にIPが固定される

MACアドレスとIPアドレスをラベルに記載してラズパイに貼っておくと、後々の接続設定が非常に楽になります。

リモートアクセス

SSH接続の設定

リモートアクセス

SSH接続の設定

初期インストール時にSSHを有効化していれば、すぐに使用可能です。有効化していなかった場合は、ターミナルでsudo raspi-configコマンドを実行して設定メニューを開き、有効にしましょう。

Windows環境からのSSH接続には「Tera Term」がおすすめです。以下のリンクからダウンロードできます。

窓の杜
「Tera Term」定番のターミナルエミュレーター

Tera Termを起動すると接続設定画面が表示されます。デフォルトでSSHが選択されているので、先ほどメモしたIPアドレスを入力し、ラズパイのログイン情報(ユーザー名とパスワード)を入力するだけで接続完了です。

VNC接続の設定

グラフィカルなリモートデスクトップとしてVNC接続も設定しておくと便利です。

Windows側では「VNC Viewer」をインストールします:

Download VNC Viewer by RealVNCツョ
RealVNCツョ Viewer is the original VNC Viewer and the most secure way to connect to your devices remotely. Download VNC Vi...

ラズパイ側ではソフトウェアは最初から導入されていますが、有効化が必要です。ターミナルで以下のコマンドを実行します:

sudo raspi-config

表示されるメニューから「Interface Options」→「VNC」を選択し、「Enable」に設定します。この設定画面はキーボード操作のみ対応なので注意してください。

設定完了後、Windows側からVNC Viewerを起動し、ラズパイのIPアドレスを入力して接続します。ラズパイのユーザー名とパスワードでログインするとデスクトップが表示されます。

注意点: 最新のRaspberry Pi OS (Bookworm)ではVNC接続時に日本語テキストのコピー&ペーストに問題があります。日本語テキストを扱う場合は、Tera TermのSSH接続を使うか、一つ前のOSバージョン(Bullseye)を使用することをお勧めします。詳細は以下の記事を参照してください。

オーバークロックで性能向上

オーバークロックの基本

アクティブクーラーを装着していない場合はオーバークロックを推奨しませんが、適切な冷却環境があればCPUクロックを上げることができます。テスト環境では2.8GHzまで問題なく動作しました。

一般的にオーバークロックすると保証対象外となる点に注意してください。ただし、ラズパイにはサーマルスロットリング機能があります。これはCPUが高温になりすぎると自動的に処理速度を下げて熱を抑える保護機能で、85°C付近で発動してパフォーマンスが低下します。

現状の確認

初期状態では、通常動作時は1.5GHz程度で動作し、最大で2.4GHzまで上がります。以下のコマンドで確認できます:

pi@raspberrypi:~ $ cat /sys/devices/system/cpu/cpu0/cpufreq/scaling_max_freq
2400000
pi@raspberrypi:~ $ vcgencmd measure_clock arm
frequency(0)=1500012800

設定方法

設定ファイルを編集します。

sudo nano /boot/firmware/config.txt

ファイルの末尾に以下の2行を追加します。

over_voltage=6
arm_freq=2800

保存して終了後、sudo rebootコマンドで再起動します。

再起動後、負荷がかかっている状態で以下のコマンドを実行すると、実際に2.8GHzで動作していることが確認できれば完了です。

pi@raspberrypi:~ $ vcgencmd measure_clock arm
frequency(0)=2800037120

性能と熱の関係

性能を評価するため、以下のPythonコマンド(浮動小数点演算のループ)でテストしました:

time python3 -c “import math; [math.sqrt(i) for i in range(10000000)]”

測定結果は以下の通りです。

クロック処理時間3分後の温度
2.4GHz時 10.8秒70°
2.8GHz時11.7秒81°

理論値では16%程度の性能向上が期待できますが、実際は向上幅が10%未満でした。また、3分間の負荷テスト後の温度は約10°C上昇しましたが、サーマルスロットリングが発生する85°C以下に収まっています。適切な冷却があれば2.8GHzの設定でも安全に運用できると言えるでしょう。

ベンチマークで性能を比較

性能比較

実際の使用シナリオを想定した性能評価を行いました。結論から言うと、ラズパイ4からラズパイ5への進化は大きく、多くの処理が約2倍速くなっています。一方、オーバークロックによる性能向上は限定的で、通常使用では体感できる差がわずかという結果になりました。

ラズパイ4ラズパイ5ラズパイ5 (2.8GHz)
起動時間(s)18.7411.811.5
書き込み時間(MB/s)37.026.025.9
読み込み時間(MB/s)45.593.594.1
1分間のFHD動画のエンコード時間2分34秒1分6秒1分1秒

ラズパイ4からラズパイ5への性能向上は非常に顕著ですが、オーバークロックの効果は用途によって異なります。特に動画エンコードなど特定の処理では若干の高速化が見られましたが、日常使用では大きな差はありません。

以下に測定方法について書いておきます。

ベンチマーク測定方法

起動時間

システム起動時間を測定。

# 再起動コマンド(開始時間をメモまたはストップウォッチでスタート)
sudo reboot

# デスクトップが完全に読み込まれてから時間を計測
# または、以下のコマンドで最後の起動にかかった時間を確認
systemd-analyze time

ストレージ速度テスト

書き込みと読み込みの速度を測定

# キャッシュをクリア
sudo sh -c "sync && echo 3 > /proc/sys/vm/drop_caches"

# 書き込み速度テスト(512MBファイル作成)
time dd if=/dev/zero of=~/test_file bs=1M count=512 oflag=direct

# 読み取り速度テスト
time dd if=~/test_file of=/dev/null bs=1M count=512 iflag=direct

# テストファイルを削除
rm ~/test_file

動画エンコード性能

実用的な処理速度としてフルHD動画の再エンコードを計測

# ffmpegがインストールされていない場合はインストール
sudo apt-get update && sudo apt-get install -y ffmpeg

# FHDをダウンロード
wget https://download.blender.org/demo/movies/ToS/tears_of_steel_1080p.mov

# 1分だけ切り出し 
ffmpeg -i tears_of_steel_1080p.mov -ss 00:02:00 -t 00:01:00 -c:v copy -c:a copy tos_1min_1080p.mov

# エンコードテスト実行(実際の計測はこれで行う)
time ffmpeg -i tos_1min_1080p.mov -c:v libx264 -preset medium -crf 23 tos_output.mp4

まとめ

久しぶりにラズパイを触ってみましたが楽しかったです。

  • ラズパイ5は価格はアップしているが性能も大幅にアップしている
  • 性能に応じたキットも必要になっている
  • アクティブクーラー装着でオーバークロックが可能だが、体感できる性能向上は限定的だった
  • 最新ラズパイOSではVNC接続時に日本語コピペに難があった


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