deep researchを使ってまとめた内容ですが、まとまっているので公開。
コシアカツバメの巣のライブ配信へようこそ!動きの少ない巣の観察も、この鳥の奥深い世界を知ることで、より一層興味深いものとなるでしょう。ここでは、コシアカツバメに関する様々な情報を、学術的な知見から地域に根差した話題、そして知っているとちょっと自慢できる「うんちく」まで、幅広くお届けします。この小さな渡り鳥の驚くべき生態と、私たち人間との関わりを一緒に探求していきましょう。

1. コシアカツバメとは:その名と分類、基本情報
コシアカツバメは、スズメ目ツバメ科コシアカツバメ属に分類される鳥類の一種です。学名は主に Cecropis daurica とされていますが、古い文献ではツバメ属の Hirundo daurica と記されていることもあります 。現在はコシアカツバメ属(
Cecropis)に分類するのが一般的です。属名 Cecropis はギリシャ語でアテネの女性を指す古名「ケクロピス」に由来します。種小名の daurica は、シベリア東部のダウリア地方にちなんで名付けられました。
和名の「コシアカツバメ(腰赤燕)」は、その名の通り「腰(こし)」の部分が「赤い」ツバメであることを示しており、実際に腰部が鮮やかな赤褐色や橙色をしています 。これが最大の特徴であり、野外での識別の重要な手がかりとなります。漢字では「腰赤燕」と表記されます。
英語名は「Red-rumped Swallow」(赤い腰のツバメ)で、やはり腰の赤色に着目した命名です。中国語では「金腰燕(キンヨウエン)」と呼ばれ、赤褐色の腰を金色に例えた美しい名前が付けられています。
日本には主に夏鳥として渡来し、繁殖を行います 。より身近なツバメ(
Hirundo rustica)としばしば比較されますが、姿形、巣の形状、そして行動に至るまで、コシアカツバメならではの興味深い生態を持っています。
2. コシアカツバメの見分け方:姿と鳴き声
コシアカツバメを正確に識別するためには、その形態的特徴と鳴き声を知ることが重要です。
詳しい身体的特徴
- 大きさ: 全長は約17cmから20cmで、日本のツバメ科5種の中では最大級とされています 。翼を広げた長さ(翼開張)は約32cmから34cmです。体重は成鳥で約18gから24gと報告されています 。
- 羽色(上面): 額から頭頂、後頸、背、翼、上尾筒、尾羽は光沢のある青みがかった黒色(濃紺〜黒色)をしています 。
- 最大の特徴(腰の赤色): その名の通り、腰の部分(尾羽の付け根付近)が赤褐色または橙赤色(レンガ色、オレンジ色)をしており、これが最も目立つ識別点です 。
- 羽色(下面): 顔(眼先、耳羽、頸側)は赤褐色で、淡い眉斑を形成することもあります 。喉から胸、腹にかけては淡い黄褐色や汚白色で、黒褐色の細かい縦斑(軸斑)が密に分布するのが特徴で、縦縞模様に見えます 。下腹部は赤褐色や淡いオレンジ色になる個体もいます。下尾筒(尾羽下面の基部付近)は黒色で、淡色の腹部と対照的です。
- 尾: 長く、深く切れ込んだ燕尾形(えんびがた)をしています。ツバメよりも尾が太く長いと言われることもあります 。特に雄の方が尾の切れ込みが深い傾向があります。
- 嘴(くちばし)と足: 嘴は黒色で短く平たい形状をしており、空中での昆虫捕獲に適しています。足・脚は黒っぽい褐色です。
- ツバメとの違い:
- 腰の色: コシアカツバメは腰が赤褐色ですが、ツバメの腰は黒っぽいです 。
- 下面の模様: コシアカツバメは下面全体に細かい縦斑がありますが、ツバメは通常、胸に黒い帯があるものの下面は白っぽく縦斑は目立ちません 。
- 顔の色: コシアカツバメは顔の側面が赤褐色ですが、ツバメは喉が濃い赤褐色です 。
- 尾の形状: コシアカツバメは尾羽が太く長く、燕尾が深いですが、ツバメは尾羽がより細く切れ込む程度です。
- イワツバメとの違い: イワツバメは腰が白いので、コシアカツバメの橙赤色の腰とは明確に区別できます 。また、イワツバメの下面は白っぽく、コシアカツバメのような明瞭な縦斑はありません。胸に不明瞭な黒帯がある場合があります。
成鳥と幼鳥の違い
幼鳥は、成鳥に比べて全体的に羽の色が褐色みがかり鈍い色合いです。腰の赤褐色部分も成鳥より淡色です。嘴の根元が黄色っぽく、尾羽が短いのが特徴です 。風切羽の先端に淡褐色の縁取りが見られることもあります。巣立ち後しばらくは、これらの特徴で見分けることができます。
特徴的な鳴き声
- 鳴き声: ツバメの鳴き声と比較して、「濁った低い声」と表現されることがあります 。よく聞かれるのは「ジュリリ ジュリリ チュー」、「ジューイ、ジューイ」、「ジョイジョイ」「チュリチュリイ」といった声です。
- 地鳴き: 「ジュリッ」 や「ジュッ」 などと聞こえる短い声も発します。
- その他: 接触声として「pin」、警戒声として「chi-chi-chi」といった声も報告されています。さえずりは柔らかくメロディアスなトリルを含むおしゃべりのような声とも言われます。
3. 生息環境と分布
コシアカツバメは特定の環境を選んで生息し、その分布域は広大です。
世界的および日本国内の分布
コシアカツバメの分布域は非常に広く、南ヨーロッパ(ポルトガル、スペインなど)や北アフリカから、中東、中央アジア、インド亜大陸、東南アジア(台湾、フィリピンなど)、中国、朝鮮半島、そして日本に至る範囲に及んでいます 。アフリカ大陸中部から東部、南部にも分布が見られます。世界的には8亜種が認められており、日本に渡来するのは亜種
C. d. japonica とされています。
日本国内においては、主に夏鳥として九州から北海道までの地域に渡来し、繁殖します 。かつては西日本(関東南部以西)を中心とした分布でしたが、近年その分布域は北上・東進傾向にあり、東北地方や北海道でも繁殖が確認されるようになりました 。一部の個体は九州南部などで越冬することもあり、冬期でも営巣場所にとどまる姿が観察されることがあります。
好む生息環境
海岸近くの住宅地や山間のビル周辺など、人家周辺の開けた環境や農耕地、河川敷などで見られます 。採餌は多様な景観の上空で行われます。静岡県での調査では、コシアカツバメの巣は森林や畑がある場所の近くに多く見られ、一方でツバメの巣は住宅が密集した場所の近くに多いという傾向が報告されています 。これは、コシアカツバメが営巣場所の選択において、ある程度自然が残された環境を好む可能性を示唆しています。海外では、開けた丘陵地や山地、河川峡谷、海岸の崖などを好み、密林や広大な平原は避ける傾向があります。標高は海抜付近から、ヒマラヤなどでは3000m近い高地でも見られます。
近年の分布変化(北上傾向)
前述の通り、コシアカツバメの日本国内での分布はかつて西日本に偏っていましたが、近年は東北地方や北海道へと分布を拡大しています 。この背景には、気候変動による繁殖可能地域の北上や、営巣に適したコンクリート建造物の増加などが関与している可能性があります。コシアカツバメは特にコンクリート製の建造物を好んで営巣場所に利用するため 、近代的な建築物が増えることで新たな営巣機会が生まれているのかもしれません。ヨーロッパでも近年、分布域の北進が確認されています。
渡り
- 渡りのパターン: 北方で繁殖する個体群は長距離を渡る渡り鳥ですが、南方に生息する個体群は留鳥(一年中同じ場所にいる鳥)です。
- 日本への渡来・渡去: 日本へはツバメよりも渡来時期がやや遅く、通常4月下旬から5月上旬頃に東南アジア方面からやってきます 。秋は10月から11月上旬頃まで繁殖地に留まり、その後、集団で南方へ渡っていきます。関東地方では3月頃から11月頃まで観察例があります。
- 渡りのルート・速度: 日本で繁殖したコシアカツバメが台湾やフィリピン、インドネシアなどで再捕獲された記録があり、長距離を移動することが示されています。渡りの際の飛行速度は時速50kmから65kmにも達すると言われます。
- 越冬地: アジアの個体群は主に南アジアや東南アジアで越冬し、日本に渡来する亜種は北オーストラリア沿岸まで渡ることもあります。ヨーロッパの個体群は主にアフリカ大陸で越冬します。
4. 巣の芸術:その構造、材料、利用法
コシアカツバメの巣は、他のツバメ類とは一線を画す独特の形状と構造を持ち、その巧みな建築技術は驚嘆に値します。
独特のトックリ型(徳利型)の巣
コシアカツバメの巣は、日本の伝統的な酒器である「とっくり(徳利)」や、ヒョウタンを縦半分に割ったような形をしているのが最大の特徴です 。このため、「トックリ型」や「瓢箪型(ひょうたんがた)」、「瓶型」などと呼ばれます。巣の入り口は細長いトンネル状(長さ5cm~15cm程度)になっており、開口部は小さいことが多いです 。この形状は、ツバメのお椀型の巣や、イワツバメの球形に近い巣とは明らかに異なり、コシアカツバメを見分ける重要な手がかりとなります。このため、「トックリツバメ」という別名で呼ばれることもあります。
巣の材料:泥と唾液、そして「ムチン」の魔法
- 主材料は泥: 巣は、鳥たちが水たまりや田んぼ、川岸などから集めてきた泥の団子を積み重ねて作られます 。使われる泥は非常に粒子が細かいものであることが報告されています 。
- 藁(わら)は使わない(基本構造には): ツバメが巣材に泥と藁を混ぜて使うのに対し、コシアカツバメは巣の基本構造には藁や枯草をほとんど混ぜ込みません 。
- 巣の内装: 巣の内部には、外部からは見えないように柔らかくフカフカした枯草や羽毛を集めてきて「ベッド」のようなものを作ることが観察されています 。これは雛のための快適な寝床となるのでしょう。
- 「接着剤」としての唾液とムチン:
- 泥団子には唾液が混ぜられ、これが強力な接着剤の役割を果たします 。
- 近年の研究により、ツバメ類(ツバメおよびコシアカツバメ)の唾液には「ムチン」という糖タンパク質が含まれていることが確認されています 。
- 特にコシアカツバメは、ツバメと比較して唾液中のムチンの量が多いか、あるいは唾液自体の分泌量が多い可能性が指摘されています。これにより、藁などの補強材を使わなくても、泥だけで堅固な巣を作り上げることができると考えられています 。まさに、自然界の「スーパーセメント」と言えるでしょう。ある研究では、コシアカツバメの巣のpHがツバメの巣よりも高い傾向があることも報告されていますが、その理由はまだよくわかっていません 。
巣作りのプロセスと期間
コシアカツバメは、一口ずつ泥の団子を運び、丹念に巣を壁や天井に塗り固めていきます 。巣作りには通常5日から15日程度かかるとされていますが 、状況によってはそれ以上かかることもあります。巣作り開始から雛の巣立ちまでを含めると2ヶ月を要したという記録もあります 。
好まれる営巣場所
- 建造物の種類: コシアカツバメは、学校の校舎や体育館、団地やマンションといった集合住宅、公共施設などの比較的大型のコンクリート製建造物を特に好んで営巣場所に選びます 。橋梁や高架下、時には駅の構内なども利用されます 。自然環境では、洞窟や崖の岩棚なども利用します。
- 建造物上の位置: 建物の軒先や庇(ひさし)の下、天井と壁が接する角など、雨風を避けられる場所に巣を作ります 。巣は地上から5m~20mほどの高さに作られることが多いです。コシアカツバメのトックリ型の巣は、天井の広い水平面と垂直な壁面がある方が作りやすいと考えられており 、実際に巣と建物が接している面は2面(例:天井と壁)であることが最も多いという調査結果があります 。
- コロニー形成: 単独で営巣することもありますが、しばしば小さなコロニー(集団繁殖地)を形成します 。ただし、ツバメほど密なコロニーは作らず、巣の入り口同士は最低でも30cm、通常は数メートルの間隔を保つとされます。
巣の再利用とメンテナンス
コシアカツバメは、前年以前に作られた古い巣を修理して再利用することが知られています 。巣は非常に頑丈で、適切に維持されれば10年以上も残ることがあると言われています 。この巣の再利用は、新たに巣を作る時間とエネルギーを節約できるという大きな利点があります。
日本で見られる主なツバメ類の巣の比較
特徴 | ツバメ (Barn Swallow) | コシアカツバメ (Red-rumped Swallow) | イワツバメ (Asian House Martin) | ショウドウツバメ (Sand Martin) |
巣の形状 | お椀型(上部開放) | トックリ型・ヒョウタン型(入口トンネル状) | 球形に近い(入口が小さい穴) | 土手や崖に掘った横穴 |
主な材料 | 泥、枯草、藁 | 泥、唾液(ムチン) | 泥、枯草 | 掘った土 |
典型的な場所 | 民家や商店の軒先、駅舎など | ビルや学校、橋梁などのコンクリート建造物 | 崖、橋梁、ダム、トンネルなどの壁面 | 土手、崖、砂地の斜面 |
集団営巣傾向 | 単独または小規模な集団 | 小規模なコロニーを形成することが多い | しばしば大規模なコロニーを形成 | 密なコロニーを形成 |

5. 生活史と行動
コシアカツバメの一年間の生活サイクル、特に繁殖期の行動は、多くの興味深い側面を持っています。
繁殖期とつがい形成
コシアカツバメの繁殖期は、地域によって異なりますが、日本では概ね5月から8月頃とされています 。一夫一妻制で、繁殖期間中はつがい関係を維持します。雄の求愛行動としては、雌の周りを鳴きながら円を描いて飛んだり、尾を誇示したりする様子が観察されています。交尾は巣内で行われることが多いようです。
産卵と抱卵
- 産卵数: 一腹卵数は通常4個から5個ですが、地域によっては2個から7個と幅があります 。
- 卵の見た目: 卵は白色です。
- 抱卵期間: 約14日から16日(長い場合は20日程度)とされています 。雌雄ともに抱卵に参加します。
- 繁殖回数: 通常、年に1回から2回繁殖します。スペインでは年に3回繁殖した記録もあります。
育雛(いくすう)と巣立ち
- 育雛期間: 雛を育てる期間は、約20日から27日間と報告されています 。
- 親による給餌: 両親が協力して雛に昆虫などの餌を運びます。
- 巣立ち: 羽毛が生えそろい、飛べるようになった雛は巣から飛び立ちます。巣立ち後も5日から6日間ほどは親鳥から給餌を受け、2週間から3週間は夜間に巣に戻って眠ることもあります 。
- 繁殖成功率: ある研究では、孵化成功率は約78%、巣立ち成功率は約95%と報告されています。
食性と採餌習性
- 餌: 主食は空中を飛ぶ昆虫類です 。ハエ類(双翅目)、甲虫類(鞘翅目)、カメムシ類(半翅目)、シロアリ(等翅目)などを捕食します。アブラムシやチョウなども食べます。
- 採餌方法: ツバメと同様に空中で昆虫を捕食しますが、コシアカツバメはツバメよりも滑空を交えてゆったりと飛ぶ傾向があり、より高い空中で餌をとることが多いとされています 。採餌時の飛行速度は時速30kmから40kmほどです。草原の火事や家畜が追い立てた昆虫を狙うこともあります。
- 飲水: 飛びながら水面すれすれを滑走して行うか、浅い水たまりで軽く着水して行います。
飛翔スタイル
前述の通り、ツバメに比べて滑空を多用し、比較的ゆったりと、そして高空を飛ぶのが特徴です 。翼を硬く平らにして滑空するのと、比較的急速な羽ばたきを交互に繰り返すと言われます。
警戒心
コシアカツバメは、ツバメと比較して人間に対する警戒心が強いとされています 。ある調査では、人間が巣から6メートル以内に近づくと親鳥は巣に寄り付かなくなるのに対し、ツバメは巣の真下に人がいても雛に給餌を続けることが観察されました 。
寿命
コシアカツバメの正確な寿命に関する科学的データはまだ十分ではありませんが、近縁種などから推定して4年から8年程度と考えられています。一般的なツバメの寿命は1年半から2年程度と短いことが知られています 。
6. 秋のねぐら行動
コシアカツバメは渡り鳥であり、秋の渡りの時期に見られる集団でのねぐら行動は興味深い生態の一つです。
- 集団形成: 秋の渡りの時期やその直前には、コシアカツバメは他のツバメ類やアマツバメ類と混群を形成し、共同のねぐらをとることがあります 。
- ねぐらの規模: これらの集団は非常に大規模になることがあります。奈良県の曽爾高原では、少なくとも500~600羽の集団が観察された記録があります 。広島県では、秋に数千羽が電線にとまっていたり、100羽単位の渡りの群れが観察されたりしたという報告もあります 。
- ねぐらの場所: 河川敷のヨシ原や、ススキの草原などがねぐらとして利用されます 。
- ねぐらでの行動: 日没が近づくと、鳥たちはねぐらとなる場所に集まり始め、上空を飛び回ったり、ススキにとまろうとしては再び飛び立ったりを繰り返しながら、徐々に落ち着いていきます 。
7. コシアカツバメと人間:地域の話題、保全、共存
コシアカツバメは、そのユニークな生態から人々の関心を集める一方、環境の変化による影響も受けています。
保全状況
- IUCNレッドリスト: 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「LC(軽度懸念)」と評価されており、世界的には絶滅の危機は低いとされています。世界全体の個体数は数千万羽から1億羽以上と推定されています。
- 日本国内の状況: 環境省の全国的なレッドリストでは主要な絶滅危惧カテゴリーには掲載されていません 。しかし、多くの都道府県では、コシアカツバメが何らかの絶滅危惧カテゴリー(絶滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類、準絶滅危惧など)に指定されており、地域レベルでの個体数減少や生息環境の悪化が懸念されています 。例えば、石川県、宮城県、山形県、群馬県、熊本県などでは絶滅危惧Ⅰ類またはⅡ類に指定されています 。
生存を脅かす要因
- 巣の破壊・営巣場所の喪失: 建物の改修、解体、塗装などにより、既存の巣が破壊されたり、営巣に適した場所が失われたりすることがあります 。
- 捕食者: カラスやヘビは、卵や雛を捕食する天敵です 。
- スズメによる巣の乗っ取り: スズメがコシアカツバメの巣を乗っ取ってしまうことがあります 。
- 農業の集約化・殺虫剤の使用: 餌となる昆虫の減少や、殺虫剤による直接的・間接的な影響も懸念されます。
- 気候変動: 繁殖サイクルや餌の利用可能性、渡りのタイミングなどに影響を与える可能性があります。
- 減少原因の不明確さ: 一部の地域での個体数減少の原因は、まだよくわかっていません 。
寄生虫と巣の衛生
ツバメ類はハジラミ、ウモウダニ、トリノミ、トリサシダニ、ワクモといった外部寄生虫の宿主となることがあります 。これらの寄生虫が多いと、羽毛の成長が悪影響を受け、飛翔能力に影響が出る可能性も指摘されています 。
地域での観察記録や逸話
- 広島県: 県内では人家のある地域で広く見られ、特に東広島市や宮島での観察記録が豊富です 。宮島では過去からの個体数変動の歴史も記録されており、近年営巣数が増加傾向にあるものの、スズメによる巣の略奪も見られるとのことです 。秋には大規模な集団が観察されることもあります 。
- 大阪府: 1990年代には、学校、団地、橋梁など、具体的な営巣場所が多数記録されています 。
- 福井県: 地元の小中学生がコシアカツバメの観察を行い、教育活動の対象となるほど身近な存在であることがうかがえます 。
- その他: 個人のブログなどでも、賀茂川(京都府)、猪名川(兵庫県・大阪府)、神奈川県内、売布神社駅(兵庫県)など、各地での巣作りや飛翔の様子が写真とともに報告されており、市民による観察が活発に行われていることがわかります 。
民間伝承と文化
- ツバメに関する一般的な言い伝え:
- ツバメが家に巣を作ると、その家は縁起が良く、幸運や繁栄(家内安全、商売繁盛)がもたらされると古くから信じられています 。これは、ツバメが安全な場所を選んで巣を作ることや、害虫を食べる益鳥であることなどが理由とされています 。
- 「ツバメが巣をかける家は病人が出ない」「火事にならない」「衰える家には巣を作らない」など、様々な言い伝えがあります 。
- コシアカツバメと伝承: 兵庫県丹波篠山市の資料では、コシアカツバメ(トックリ型の巣の絵とともに)について、一般的なツバメの伝承を当てはめて紹介しています 。
- 海外の文化:
- 中国: 「金腰燕」と呼ばれ、ツバメは女性の優雅さや美しさ、春の使者、幸運、家族の調和の象徴とされます。家屋近くの巣は良い風水の印とも言われます。
- ヒンドゥー教: ツバメはヴィシュヌ神と関連付けられ、愛が悪に勝る力の象徴とされます。
- 古代エジプト: ツバメは死者の魂や星座航法と関連付けられていました。
- ヨーロッパ: 春の前触れ、幸運の象徴とされ、ツバメを殺すと不幸が訪れるという信念があります。
- 天気予報: ツバメが低く飛ぶと雨、高く飛ぶと晴れという言い伝えは世界共通で見られます。これは気圧の変化で昆虫の飛ぶ高さが変わるためと考えられています。
- 和歌や俳句: 「腰赤燕」そのものを詠んだ有名な古典和歌や俳句は特定が難しいですが、「燕来る」は春の季語であり、コシアカツバメもその対象となり得ます 。
8. コシアカツバメうんちく集:ライブ配信を彩る豆知識
コシアカツバメの巣のライブ配信をより楽しむために、知っていると面白い豆知識や、まだ解明されていない謎をご紹介します。
コシアカツバメに関する興味深い事実
- 名前の由来: 腰の部分が赤い(オレンジ色っぽい)から「腰赤燕」!
- 巣の形: 普通のツバメと違い、まるで徳利(とっくり)や瓢箪(ひょうたん)みたいな形で、入り口が細長いトンネル!
- 巣材の秘密: あの立派な泥の巣、実は藁(わら)をほとんど使っていません。秘密は特別な唾液!唾液に含まれる「ムチン」というネバネバ成分が、泥同士を強力にくっつけているんです。
- シャイな一面: 普通のツバメより警戒心が強いと言われ、研究によると人間が巣から6メートル以内にいると巣に近づかないことも。
- 北へ進出中: 日本での生息エリアを広げていて、昔は西日本が中心でしたが、最近では東北地方や北海道でも子育てをするようになりました。
- 秋の大集会: 南の国へ渡る前には、数百羽、時には数千羽ものコシアカツバメが大きな群れを作って集まることがあるんです!
- 頑丈リフォーム住宅: コシアカツバメの巣はとても頑丈で、壊されなければ10年以上も持つことがあるそうです。そして、古い巣を修理してまた使うことも多いんですよ。
- 子育てはワンシーズン集中型: 普通のツバメは夏に2回子育てすることがありますが、コシアカツバメは基本的に1回(多くても2回)。だから、一回一回の子育てがとても大切なんです。
- 優雅な飛行術: 空飛ぶ姿はとっても優雅。普通のツバメよりも高いところを、スーッと滑るように飛ぶのが得意です。
- 多くの県で要注目: 日本の多くの県で、コシアカツバメはレッドリストに載っていて、その数を注意深く見守る必要がある鳥とされています。
- 巣の中はふかふかベッド: 硬そうな泥の巣の中も快適?実は、巣の内側には、親鳥が集めてきたフワフワの枯草や羽毛が敷き詰められていて、雛たちのベッドになっているんです。外からは見えません!
- 世界を股にかける旅鳥: 北方で繁殖するコシアカツバメは、冬になると遠くアフリカや南アジア、さらにはオーストラリアまで渡りをします。
- 亜種の多様性: 世界にはコシアカツバメの仲間(亜種)が8種類もいるとされ、それぞれ少しずつ姿や渡りのパターンが異なります。日本で見られるのはそのうちの1亜種です。
- ヒメアマツバメとの意外な関係: 北関東では、ヒメアマツバメという別の鳥が、コシアカツバメの古巣を再利用して営巣する例も報告されています。
9. まとめ
コシアカツバメは、その美しい姿、独特な巣作り、そして興味深い生態を持つ魅力的な鳥です。腰の鮮やかな赤褐色、トックリ型の精巧な泥の巣、そして滑空を交えた優雅な飛翔は、多くの人々を惹きつけます。彼らは夏鳥として日本に渡来し、主にコンクリート建造物などに集団で営巣し、子育てを行います。その巣材には唾液に含まれるムチンが重要な役割を果たしており、藁を使わずに堅固な巣を作り上げるという驚くべき能力を持っています。
一方で、多くの都道府県でレッドリストに掲載されるなど、その生息状況には懸念も持たれています。巣の破壊やスズメによる乗っ取り、環境変化による餌資源の変動、そしてまだ解明されていない原因による地域的な個体数の減少など、彼らが直面する課題は少なくありません。
しかし、ツバメ類全般に寄せられる「幸運の鳥」という温かい眼差しは、コシアカツバメにとっても大きな支えとなるでしょう。彼らの生態をより深く理解し、その魅力を多くの人々と共有することが、この空の建築家たちとのより良い共存への第一歩となるはずです。このライブ配信が、その一助となることを願っています。
Youtubeで定点観測やってます。